「商店街ホテル」って何ぞや?
実は、年末に噂の「商店街ホテル 講 大津百町」に宿泊してきました。
「商店街に泊まる」っていうコンセプトで、2018年8月にオープンしたばかりの古民家改修のリノベーションホテルです。
場所は滋賀県大津市。琵琶湖のほとりですね。そして運営は「里山十帖」の(株)自遊人です。
公式サイトにはこのようなコンセプトが書いてあります。
「街に泊まって、食べて、飲んで、買って」をコンセプトにする、新しい「メディア型ホテル」が大津の街に誕生しました。雑誌のページをめくるかわりに街を歩く、紹介文を読むかわりにお店の人と話してみる。さらに自分で見つける街のあれこれ……。雑誌やテレビ、インターネットでは得られない「リアルな体験」をテーマにした宿、それが「商店街ホテル 講 大津百町」です。
あの「里山十帖」の自遊人が、ですよ。商店街活性化を目的のひとつに据えて、大津の街なかに数店のリノベーション宿屋をオープンしているっていう話なんです。
興味シンシンなわたしとしては、機会があったら行きたいなと思っていたのですが、ちょうど旦那と息子が年末に二人旅することになりまして。うまいこと機会ができたので、単身、大津に向かったわけです。
結果的にとてもいいもの見させてもらったので、それを整理して書いていこうと思います。
(こんな感じで外見は古い建物を改装した感じです)
商店街活性化を民間二社で取り組む
引き続き、公式サイトや雑誌「自遊人」によると、ざっくりとした特徴はこのようなものです。
・2018年8月にオープン。2018年のグッドデザイン賞を受賞。
・全7棟13室で、各棟が商店街の中に点在している。
・オーナーは地元で木造建築を手がける谷口工務店。ここの谷口社長と自遊人の岩佐編集長の出会いからこの企画が始まったとのこと。
・行政がやっているのではなく、完全に民間二社による取り組みとしての「商店街ホテル」である。
大津は京都から電車で20分という好立地なんですが、そもそも京都の宿は飽和状態で、今さら宿をオープンしても、というところもあるそうで。
それなのに、この地に商店街ホテルを作った理由も、きちんと公式サイトに書いてありました。
大津の商店街は衰退が進んでいるけれど、いいお店が多くあること、などなどです。
宿の部屋に雑誌「自遊人」が置いてあって、岩佐編集長はこんなことも話していました。
「一言で言えば危機感ですよね。大津に限らず日本中で昔ながらの商店街は苦戦しています。郊外のショッピングセンターにお客さんを取られ、どこもシャッター通りと化しているのが実情です。市街中心部が衰退することは、すなわち町の活力そのものが失われていくことなんです。しかも旧市街地の町家が次々と壊されて、マンションに変わっていくのもなんとかしたかった。幸い、オーナーの谷口工務店は腕に覚えのある自社大工を多く抱えています。谷口社長も熱い人で、棟梁の意気込みを大津の人にみてもらいたい と、投資を決意したわけです」
谷口工務店の高い技術力で、断熱を徹底したお洒落な建物をつくって、宿のディレクター&オペレーターとしての実績がある自遊人が、両者のメリットを活かす形で経営に乗り出したと。そういうことだそうです。
やっぱり「思いのある」人の出会いから話が始まるんだなあと。
普遍性を感じる話ですよね。
というか、全7棟が商店街の中にすでにある、というところがすごくないですか(笑)。
いきなり7棟ですよ。
ひとつの建物だけじゃインパクトが弱いってことなんでしょうね。
しかし、商店街の中にリノベーションしたカッコイイ建物が7つも! すでに商店街の財産みたいなものになってるんじゃないかしらと、個人的には思います。
宿泊施設が点在しているので、レセプション棟としての機能を「近江屋」がもっています。1Fにフロントがあって、すべての棟の宿泊者はここで手続きをする仕組みです。
これはホテルからもらったマップです。わたしは「近江屋」の一室に泊まったんですが、他にも「茶屋」とか「鍵屋」などのホテルの建物が、こんな感じに点在しています。
こんな感じの商店街の中に……
こんな感じで、ポッと「商店街ホテル」の建物がある、わけです。
いいですよね~、いいですよ。すごくいいです(笑)。
「ステイファンディング」という仕組み
そして、商店街活性化のための「ステイファンディング」という試み!
これは、疑似的な入湯税や宿泊税のようなものでして。1人一泊あたり150円を徴収して、それを大津の商店街や町おこし団体に寄付するんだそうです。
それなら運営者の谷口工務店なり自遊人が、まとめて寄付すればいいじゃないの……と思われるところですが、そうじゃなくて。
お客さんが来てくれるごとに金額が増えていくわけですよ。ひとつの企業でまとめて払うのと、ひとり一人のお客さんから集めているお金とは意味合いが違いますよね。積み上げた数字に意味が生まれてストーリーができる。
そこが狙いなんだろうなと思います。
わたしがいただいた領収書にも、ちゃんとステイファンディングのことが書いてありました。
お客さんにも、きちんとこうやってお知らせしているのはいいですよね。
(宿泊者はロビーでお茶とかお酒とか自由に飲めたりします。余談ですが、わたしがお邪魔した日は年末だったんで飲食店がお休みだったりで、思ったように飲み食いできなくってですね。このロビーの空間、とても助かりましたよ~)
商店街ツアーがある!
そんなわけで、商店街ツアーがあるんです!
予約するときに、オプションで「商店街ツアー」を予約できるんですよ。
これは、と思い当然予約します。宿泊者でご希望の方は参加できます、というサービスメニューなんですが、この日は参加者わたしだけ(笑)。
ロビーで待っていると、スタッフのSさんがやってきて出発になりました。なんかひとりですみません…。
近江屋と茶屋がある通りは舗装されていて、「大津祭」でも通り道。お店の二階から曳山に乗り込むそうで。へええ、と。そんな豆知識も教えてもらいました。
丸屋町商店街の端っこから始まりまして、最初は酒屋さん「平井酒店」ですね。「浅茅生(あさぢを)」という地酒を買うことができます。おかみさん(?)が、きちんと応対してくれます。創業は万治元年(1658年)とのことで凄ッ。めちゃ老舗ですね、さすが大津。
和菓子店「茶菓 山川」です。洒落た生菓子が並んでいまして。この季節にしかないお菓子とのことで「花びら餅」を購入して食べたのですが、これあの、初めて食べましてびっくりしたので……後述します(笑)。
次は菱屋町商店街に入りまして、漬物の老舗「八百與(八百与)」ですね。「ながら漬」っていうのが名物で、粕漬け? キュウリとかカブとかなんですが、味わいが上品な感じです。なんてえのかな、あんまり主張しない美味しさなんですよ。
わたしは長い大根(名前忘れた)の漬物を買ってみました。年末だったんで、いろんな珍しいものが置いておりました。
ここから長等商店街かな? 琵琶湖の固有種などを扱っている鮮魚店「タニムメ水産」さんですね。
ホテルで朝食にいただく鰻茶漬けの鰻も、こちらのお店でつくっているらしいです。地元のお店でつくっているものを泊まったホテルで食べることができるっていうのは、本当に素晴らしいことだし。贅沢ですよね~。
っていうか、そのまんまの鴨のつがい(写真右下)とか、すっぽん(こちらは生きていた)などが素で売ってるのがすごいと思いました。購入すると鴨をきちんとさばいてくれるそうです。
店主さんがいろいろお話してくださって。写真は載せないよって約束したので手だけ(笑)。
で、このあとお茶屋さん「中川誠盛堂茶舗」に寄って「朝宮茶」などいただき購入したりしたんですが写真撮り忘れました。
名物鮒寿司の「元祖 阪本屋」さんです。建物カッコイイ。国の有形登録文化財なんですって。
鮒寿司は1年かけてつくる発酵食品なわけです。うう~ごめんなさい。すっぱい匂いがどうも苦手で。頭のところだけ売ってたのでそれだけ買いました。
そして戦利品。
けっこうじっくり楽しんでしまい。スタッフSさんに一時間近くも案内をしてもらいました。ありがたかったです。Sさんご本人も大津の町が好きなんだなというのが分かりまして。そういうところも好感ですし、話を聞いていて心地よかったです。
で、商店街ツアーとして何が参考になったの? というところ。
まとめとして、まず一つ目。
最初にスタッフSさんがはっきり説明してくれるところがよかったです。
「これからいろいろお店を見て回りますが、ぜんぜん買わなくていいです。気に入ったら買っていただけたら嬉しいです」
と、”買え買えツアーじゃないよ”と、言ってくれるのです。
こういうのいいですよね。わたしなんかは説明なくても自分の好きなように行動しますけど。
ほんとに一般のお客さんだったら、”これ買わないとまずいのかしら?”って思ってしまうかもしれない。
最初にしっかり言っておくのはとてもいいことだと思います。
そして二つ目。
お店のみなさんも、”買え買え”アピールはしません。
わたしたちがやっている「かながわ商店街観光ツアー」と同じようにお店の歴史や、商品の客観的な説明とか、お店の商品に関する豆知識とか、そんな話をしてくれます。
それがいいんですよね。買わなくてもいいから、安心して見て回ることができます。
逆説的に、買え買え言われないから、お客さんが購入しようという気になってくれるんじゃないかなと思います。
つまるところ、連れていくガイドもお店の人も”買え買え”ではなく、お店の歴史やまちを知ってもらう姿勢を徹底してるんです。
神奈川でもそのようにしているわけですが、よそでもここは大切にしているところなんだなということが分かりました。
それがとても参考になりました。
断熱やばい
と、宿と商店街の関係について、ひと通り紹介するとこんなところでして。
次はホテル自体の話。
断熱不動産やばいですよ。やばいです。めちゃくちゃ快適です!
つまるところ、建物自体の話なんですけどもね。
これがね、元は古い建物なわけですから。きちんとリノベーションしないと隙間風で寒いとか、夏は暑いとか居心地悪くなっちゃうんですよ。
それが、この「商店街ホテル 講」めちゃくちゃ快適です。
暖房なんか普通のエアコンで21度ぐらいで少し回してればすぐにほかほか。バスルームも暖房でほかほか。ヒートショックの心配いらずです。
谷口工務店さん、そういえば宿の紹介記事や公式サイトに「木造建築の技術力が高く……」とありました。
この断熱はすごくイイですよ(笑)
真冬で、かなり寒い日でしたけど、エアコン21度で充分なんです。
寝る前にエアコン切ったんですけど。ぜんぜん寒くないですよ。
夏も暑い地域だろうから、夏は夏で外気を遮断して涼しく快適なんだろうなあと思いました。
実は断熱不動産、初体験だったので。
これはすごい、こういうお家に住みたいって本気で思いますね。
それぐらい快適でした。
その他。大津の食文化などなど
よそで「商店街ツアー」ってどんな感じでやってるのかな、というのが分かり、
本当によい経験をさせてもらいました。
なので、レポート記事としてはここまで、なので、あとは、個人的な話とか余談を少し。
山川さんで買った「花びら餅」です。
これ京都あたりで年末年始に食べるものだそうで、ごぼうが挟まってるんですよね。
初めて食べたんで「!?!?」ってなりました。
すいません、ものを知らなくて……。ごぼうの味が強烈で、ほんとにびっくりしてしまいました。
あと、鰻茶漬け。
ホテルの朝食にいただきました。味が濃いので、お茶漬けで崩して食べていくのにちょうど良いですね。
小さな器にいろんな食材が少しずつ入っていて、ご飯で食べる朝食はとても美味しかったです。お洒落です(笑)。
琵琶湖は風が強くて寒かったですけども、三井寺や石山寺などが近くにあって。大きなお寺で見ごたえあって楽しかったです。
翌日は少しだけ京都観光して、新幹線で帰りました。
大津なかなかいいですね。今度は家族で来ようかなと思いました。
おしまい。
長文記事になりましたのに、
最後までお読みいただいてありがとうございました。
「商店街ホテル 講 大津百町」
http://hotel-koo.com/