日本酒イベント「CRAFT SAKE WEEK」の参加費が高いという話は本当なのか? という話

 世界最大級の日本酒イベント「CRAFT SAKE WEEK」が、六本木ヒルズアリーナで4年ぶりに開催されるということで、初日に参加してみました。イベントの様子や感想をレポートとしてまとめます。
 きき酒師の資格を持っている日本酒の専門家としての立場から、個人的に良かったところ等々イベントについてお酒の話と、価格設定について紹介します。

「CRAFT SAKE WEEK」とは

 まず「CRAFT SAKE WEEK」についてです。
 開催期間は毎年4月末ごろ。今回は2023年4月21日から30日までの10日間の開催で、イベント会場は六本木ヒルズの六本木アリーナでした。全国から厳選された100軒の酒蔵が日替わりで出店し、参加者はその日本酒と、イベントに出店する予約の取れない有名レストランのお料理をつまむことができるというものです。

 このイベントは、中田英寿氏がオーガナイザーを務めることでも有名です。彼は日本全国47都道府県を巡り、400以上の酒蔵に訪問し、日本酒の奥深さと可能性を強く感じたことから、2016年に「CRAFT SAKE WEEK」をスタートしたとのこと。
 日本酒と料理だけでなく、アートや音楽も取り入れています。圧倒されるような数の枡が積み上げられたインスタレーションは、建築家の田根剛氏が手掛けたもの。また毎日ジャンルの異なるDJがステージにて音楽をセレクトしハイセンスな空間を演出しています。

スターターキットを購入し、さらに追加コインを購入

 というわけで、わたしは以前からこのイベントに参加したかったのですが、コロナ禍で機会が無かったのです。今回ようやく参加できるとあって、せっかくなので会社を休んで、平日の初日から参加することにしました。
 4/21(金)の12:00に、六本木アリーナの会場に向かいます。参加するためのスターターキットは事前購入しておきました。

 スターターセットは¥3,600。イベント用のオリジナル酒器グラスと飲食用コイン11枚がついてきます。
 これを購入しておけば、2回目以降は、オリジナルグラスを持参すると追加コイン購入のみで楽しめる仕組みになっています。

 日本酒はコイン4~9枚ぐらいで1杯。お料理は各店6枚~10枚ぐらいの品となっています。
 とすると、計算上スターターキットのコイン11枚では、お酒1杯と料理1品で終了です(笑)。なので、ひとまず追加コイン20枚(3,000円)を追加で購入することにしました。

実際に購入したもの

 購入して楽しんだものを並べてみます。( )はコインの枚数です。

 日本酒:5杯
 菊泉 ひとすじロゼ(9)
 七賢 アランデュカス スパークリングサケ(7)
 やまとしずく 純米吟醸 美郷錦(4)
 陸奥八仙 貴醸酒(4)
 南部美人 あわさけスパークリング(8)

 料理:2品
 「la Brianza(ラ ブリアンツァ)」のイタリアン磯辺揚げ(5)
 「にほんもの」とうもろこしのムース(3)

 これで、初日8,200円のお会計となりました。

初日はAWA酒の日でした

 初日はAWA酒の日ということで、さすがのラインナップです。黒龍や南部美人、水芭蕉などのブランドが揃っていました。
 「AWA SAKE」というのは、スパークリング日本酒です。
 数年前から酒蔵さんたちが28社ほど集まって「一般社団法人AWA酒協会」という業界団体をつくって、スパークリング日本酒に製品基準を設定して、その基準をクリアした製品をAWA酒として売り出しています。
 定義があるので興味のある方は調べていただければと思います。ざっくりいうと、炭酸を後から添加したりするんじゃなくて、自然発酵による泡に限定していたり、アルコール度数を10度以上にすることなどが基準として設けられています。

 ちょっと話がそれましたが、要するに品質基準をしっかりやっているスパークリング日本酒である「AWA酒」を出している酒蔵の商品のみ集めましたという日が初日だったのです。
 こうした高品質指向は、このイベント「CRAFT SAKE WEEK」に初日を飾るのにふさわしいものと言えるかもしれませんね。

 駆け足紹介しますと、
 「菊泉 ひとすじロゼ」はこの日の最高金額のものでしたので、真っ先にいただきました。ピンク色でアルコール度数は11度。日本酒度は-45で酸は3.8。甘めでしたが酸でバランスをとるように設計されていて、バランス良く、飲みやすかったです。
 「七賢 アランデュカス スパークリングサケ」は、さすがの滑らかさ、きめ細やかさでしたね。アラン・デュカス氏は、フランスの高名なシェフです。こちらは実際にデュカス氏に監修していただいたお酒です。シャンパンに近い、甘味の少ないドライな味わいでした。
 「やまとしずく 純米吟醸 美郷錦」は、この日のラインナップの中で、程よい重量感があって良かったです。
 「陸奥八仙 貴醸酒」は、軽めの(?)貴醸酒。興味があったので飲みました。甘さは貴醸酒にしては控えめで、ラベル隠したら貴醸酒とは分からないぐらいでしたね。
 最後「南部美人 あわさけスパークリング」は、アルコール度数が14度なのでこの日のAWA酒の中ではボリューム感を感じる方でした。甘味もしっかりあるんですが、サッと切れていく後味でした。

 レストランの方は、わたしでも知ってるモダンベトナムの店「An Di」とか、オシャレなお店が出店していました。
 「la Brianza」のイタリアン磯辺揚げは、手頃でおつまみに良さそうだったので購入しました。塩気が日本酒と合わせやすくて良かったですね。
 と、この日はお酒を多種類味わうことを重視したので、料理はほぼこの1品で終了、です。

お会計、そして本題

 繰り返しますが、初日は8,200円のお会計となりました。
 ・スターターセット:3,600円
 ・追加コイン20枚:3,000円
 ・追加コイン10枚:1,600円
 です。

 なかなかの金額です(笑)

 8000円使えば、ごく普通の居酒屋やダイニングバーでお酒と料理をお腹いっぱい食べることができる金額かと思うのですが、今回は日本酒60mlを5杯につまみ2品で終わり、ぜんぜん食べてないのに2時間も滞在できないって……すごいな、と素直に思いました。

 正直、お酒と料理の品質を考えずに量だけで言うと、高く見積もっても4,000円ぐらいなんじゃないでしょうか。そもそもお酒の量が……けっこう少ないですよね。グラスが小さいので、だいたい60mlぐらいでした。一合とっくりが180mlですから、あれの1/3の量しかありませんので、すぐ飲み終わってしまいます。場がもちません。

 これって、高い、でしょうか?

 ……うん、高いですね(笑)!

しかしこの価格にも意味があると考えれば……

 確かに、飲み食いするのにかなりの割高感はありました。ただ、会場が六本木です。会場借料も相当高いだろうと想像がつきますし、まあ仕方ないのかなという気持ちにもなります。

 さらに改めて思うと、本当にメジャーどころの酒蔵さんはきっちり揃ってますし、こうやって、同じ場で希少なお酒を一度に味わえるという機会はなかなか無いと思います。例えば新政と十四代が同じイベントに揃うなんてこのイベントぐらいではないかと思います(品評会は除いて、です)

 あと、大事なことが2点ほど。わたしが行った初日は平日だったこともあって、人が少なくて結構快適だったんですよね。前述のとおり滞在し続けるにはそれなりのお金がかかります。なるべく混雑しないようにするという意味でも、価格を高くするという戦略は有りだなと思いました。
 コインの価格から計算して、だいたい入場料2,000円(グラス付き)の飲食イベントだと考えておくと納得感があります。

 もう一つ、この価格帯だと、なかなか泥酔できないんですよ(!)

 お客が泥酔しないので、客層が悪化しないんですね。これ、六本木という場を会場に「ブランド力」でお酒や料理をPR、売っていこうと考えているイベントとしてはすごく重要なことだと思います。
 いいイメージを売り出したいのに、会場で酔って大声出したり絡んだり暴れたりする人いたら逆効果じゃないですか。ちなみに他の日本酒のイベントなどに参加すると、よくトイレ近辺に泥酔した子(男女問わず)がうずくまってたりします。それがこの「CRAFT SAKE WEEK」には居なかった。

 これはきちんと考えて、あえて価格を高く・量を少なくしているのかなと思いました。

 ……ちなみに、ここまで書いておきながらなんですが、
 別の日にも会場に足を運んだところ、休日でものすごく混雑しており、価格が高いから混雑しない、ということはないのだな、と思いました。さらに酔ってるお客さんもお見かけしました。
 しかしそれでも他のイベントに比べたら圧倒的に酔客は少ないですし、お料理買うのに一時間待ちなどということも無さそうだったので、価格の高さにより、運営の思うところに落ち着いているのではないかなと、思った次第です。

それぞれの酒蔵の代表者の方々も会場にお越しになっており。お顔を知っていればお話できる、というのも面白い点の一つですね。

まとめ

 というわけでまとめます。
 自分の感想としては、良くなかったところとして、
 ①コストが高すぎる 
 ②土日はやっぱり混みあう
 ③お酒、お料理をじっくり楽しめる場ではない

 という点を挙げておきます。

 良かったのは、
 ①希少なお酒やレストランの料理を試せるのはいい
 ②この手のイベントにしては、比較的空いている
 ③ガラの悪い男女酔客がいない

 というところです。

 良かった点のことを考えると、この価格は仕方ないかもね、と納得できるところです。
 業界に詳しい方に聞いたところ、初期のころは試行錯誤をしてなかなかうまくいかない部分もあったそうなのです。が、今回、実際に参加してみて、悪くないのではないかと思いました。

 上記に書いたとおり、じっくり楽しめる場ではありませんが、気軽に一度に名店や名酒を味わえる機会であるので、そういった意味でとても良いイベントだと思いました。

 もしここまでお読みいただいて、ご興味のある方がいらっしゃいましたら、
 今週末(4/30まで)開催しておりますので、ご参加してみてはいかがでしょうか?

 現場(?)からは以上です。
 わたしももう1日ぐらい参加してみようと思います。

会場設営中です。混んでいる日はここに人がワッと溢れます。

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かながわの商店街に関係するお仕事を20年やってきました。最近はきき酒師の資格を取り、日本酒ばかり飲んでいます。文章書いたりするのが得意ですが、最近は動画撮る方が楽しいです。