日本酒の話

日本酒の裏ラベルには深淵な世界が広がっている

日本酒って、実はいろいろ違っています

日本酒の魅力に夢中になってから、1年と半年たちました。
半年で唎酒師の資格を取り、だいたい500本ぐらい飲んできたと思います。
日本酒は繊細なお酒ですが、同じ醸造酒のワインよりも味や香りの幅は狭いと言われていますが、その分「細かく違って」います。
だから難しい。

以前、こんな記事をnoteに書きましたが、唎酒師になっても、分かること・できることは限られていまして……

詳しくは上記の記事の中にありますが、つまるところ、きき酒師になったら即テイスティングの達人になる、というわけではないのです。(お酒づくりの知識や常識などはとてもよく理解できましたけども)
日本酒の香りと味を見て、そのお酒がどうなのか評価をするテイスティングが全くできない。

それで、現在は「インフィニット酒スクール」というお酒の専門学校に通っています。中級コースで、テイスティングを実践で勉強中です。
先生は、毎年3,000本ぐらい飲んで10年ぐらいすれば、自分ぐらいの感覚が身に着くとおっしゃっています。
それって毎日10本ぐらいの計算です。
わたしは1週間に10本ぐらいのペースなので、一生かかってしまうのではないかと戦々恐々としています。

実際の日本酒ラベルから深淵を覗く

と、お酒教室の話はまた後日に譲るとして、
今回は、実績にあるこのラベルの謎(?)を解き明かしたいと思います。

とくに情報の多い、呪文的なものを選びました。
こちらは滋賀県のお酒「不老泉」の純米吟醸です。ここにいろいろなことが書いてあるので、まずは見てみていただけますか。
情報がすごく多いですね…。

で、いきなり、ですが。

そもそも論として、パッと見でこれだけ多くの情報が書いてあるってことは、これ「マニア向けの情報」ってことなんですよ。
マニアにしか違いや数値の意味が分からない情報を盛り込むということは、一般の方向けの商品ではないということです。
これだけ情報が多いってことは、このお酒はマニアの方に飲んでもらいたいという醸造元の意思表示なんです

ラベル情報が多い = 日本酒マニア向けの、個性的なお酒

……ということです。
ボディビルダーの方が、筋肉を見せる時に体重や体脂肪率の数字を公開するのに近いんじゃないですかね(笑)。

ということであるならば逆説的に、情報が少ないお酒はマニア向けではないということになります。しかし「マニア向けではない」ということが「飲みやすい」こととイコールではありませんので、ご注意ください。
ここで言いたいのは、あくまで、ラベル情報が多いのは個性的である、ということだけです。

注目すべきは、アルコール度数です

そして、一番最初に注目するべきところは、「無濾過生原酒」である部分と、「アルコール分17度以上18度未満」の二点だと思います。
この2点で「あっ、パンチがあって濃いお酒なんだな」ってことが分かります。

無濾過生原酒とは「無濾過」で「生酒」で「原酒」であるという意味です。詳しくは後にゆずりますが、濾過をしていなくて火入れをしていなくて水を入れた調整もしていないということです。乱暴な言い方ですが、つくって絞っただけ、ということです。

日本酒のアルコール度数は、だいたい15度~17度ぐらいのものが多いです。
15度でも16度でも17度でも、変わらないような気がするかもしれませんが、これが、はっきりと違います。アルコール度数が違うだけで、お酒の全体の味のパンチ度が変わります。
ボクシングでいったら、15度はフェザー級、18度や19度になればヘビー級です。アルコール度数が増えれば、味が濃くて強い印象を受けることになります。

本当は一番大事なのはアルコール度数なんですが、無濾過生原酒はここ数年の流行のスタイルなので着目します。
ボクシングで言ったら「最近、ヘビー級でインファイト(※接近戦スタイル)の選手が多いよね~」みたいなところです。この組み合わせで作って売ってるお酒が多いのです。だから着目なのです。そのスタイルなのね、という。

アルコール度数は「いつ飲むべきか」のメッセージ

なぜ日本酒のアルコール度数が一番重要かというと、味わいや香りの全体の強弱のトーンを決める数値だからです。そして蔵元は、お酒を設計するときに、わざわざその数値になるように作っているからです。

つまり「なんとなくアルコール度数を15度にしてみました~」とか「作ってみたらアルコール度数が18度になっちゃった」ということはあり得ない話なのです。蔵元は明確な理由があって、アルコール度数を設定にしています。

だからラベルを見るときは「まずアルコール度数から」なんです。
そこに蔵元から「いつ飲んでほしいのか」というメッセージがあります。

例えば、食前酒として最初に飲むお酒としてデザインするならば、低アルコール度に設定します。最近はアルコール度8度ぐらいのものもありますね。
一通りお料理をいただいて落ち着いたころに、お酒単体でじっくり味わってもらうなら、18度、19度ぐらいも有りなのではないでしょうか。(写真ラベルのお酒は明らかにそういうデザインです)

お店で頼む時って、日本酒は店員さんにオススメを聞くことが多いですよね。その時に「アルコール度数の低いものを」なんて頼む人、ほとんどいませんけど(笑)。でも、最初の一杯として選ぶんであれば「飲み口の軽いものを」という意味でアルコール度数に言及するのも有りでしょうね。
店員さんは困惑顔になるかもしれませんが(笑)。

さて、今回の話はここまでといたしますが、種明かし的な意味合いで、上記ラベルの意味は簡単に書いておきます。ご興味のある方だけお読みください。

おまけ:ラベルの意味(左上から順番に)

山廃仕込みとは → 時間をかけて天然の乳酸菌を育てて、丁寧に仕込んでいるという意味。その中で山おろしという作業を省いているので「山廃」。
純米吟醸とは →精米歩合が60%以下のもので、華やかな香(吟醸香)を出すことをコンセプトにしているもの。
備前雄町とは →酒米(酒用の専用米)の種類です。おまち、と読む。
無濾過とは → 濾過していないという意味。濾過すると、色が透明になり、雑味と香りが濾過される
とは → 火入れ(低温加熱殺菌のこと)をしていない
原酒とは → 加水をしていない。(通常はアルコール度数を調整するために水を加える)
日本酒度とは → 甘口・辛口を示しているものだが、単純に糖分の高低を表している数値。プラスだから辛口とは限らず。
酸度とは → 酸の量。乳酸、リンゴ酸、クエン酸など。
アミノ酸度とは → アミノ酸の量。旨味成分や甘味、苦み成分を含む。
杜氏とは → 醸造責任者。
酒母とは → お酒の元。蒸米、麹、水を投入して酵母を培養する液体のこと
使用酵母とは → お酒の味や香りに影響を及ぼす微生物。このラベルでは無添加と書いてあるので「蔵付き」といって、蔵に自然にいる酵母が入って酒母ができているということ。
原料米とは → どの酒米を使っているか。
精米歩合とは → どれだけ米を削って使っているか。55%なので、55%残っているという意味(45%削った)
酒造年度とは → 醸造した年。
製造年月とは → 製品化した時。(つまりこの酒は2年ほど寝かせて熟成させた)
アルコール分とは → アルコール度数。
原材料名とは → ここは酒税法の関係で、書かないといけないところ。

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