目で味わうべきメニューを舌で味わってしまい「納得いかない」となった話

(和菓子店カフェの記事の続きです。もし良かったら合わせて2つ、比較してお読みいただけたら幸いです。)

Higashiya man Ginza、というモダン和菓子店のカフェに行ってきた話の続編です。
「酒果」というお酒とお菓子のペアリングセットについて、こちらの記事で語ったのですが、書いているうちに、根本的に楽しみ方を間違えていたのではという結論に至ったのです(!)
せっかくなので2つの記事で別側面のレポートとしてまとめることにしました。

<<この記事は、目を使ったレポートです。別記事で舌を使ったレポートを書いております。併せてご参照ください>>

どんなメニューだったか

酒果というメニューです。
以下の写真のように、お酒とお菓子を組み合わせるものは「酒果」。お茶とお菓子を組み合わせるものは「茶果」としているようです。お値段は同じ4500円。
そして、お店に伺った時期が12月前半でしたので、季節の二十四節気に応じて“大雪”のメニューとなっていました。

順番に、簡単にレポートしますね。
(※味については、別記事を参考にしてください。ここでは語りません)

1.発泡純米酒+鳥の子(生姜入り白餡と蜂蜜羹)

発泡の純米酒と、ひと口菓子のペアリングです。
生姜入り白餡で、蜂蜜味の羹を包んであります。

木の蓋が載ったうすはりのグラスに純米酒、紙の皿に「ひと口菓子」の組み合わせです。
このグラスに木の蓋が載っていたのが洒落てるなと思ったのと、
とくにこのお皿。紙製なんですね、すごくいいですね(笑)。陶器もいいけど、紙の質感がすごくいいです。

蓋付きというのがポイントなんでしょうね。
ワイングラスにはふつう、蓋はつかないです。特別に作っているわけです。そこがポイントなのかな。

2.ココナッツテイストの焼酎+唐茶

紅茶餡の中にスパイシーな感じの羹が入ってるお菓子に、ココナッツジュースをブレンドした焼酎の組み合わせです。

この焼酎が入った白いカップが、またいいですね。
エスプレッソカップ、またはデミタスカップというやつですね。この形状のものは珍しいのではないでしょうか。これでコーヒーだしたらすぐ冷めちゃいますからね。

形状からして、冷たい飲み物用のカップなんです。これも特注で作ってるものなんでしょうね。なかなか攻めてるなと思いました。

また季節のお菓子が、何色になっても色味を合わせられるようにしているんですね。この2番目メニューは季節によってカラフルになったり変わるんじゃないかな?

3.ウイスキーシングルモルト余市+露考茶

シングルモルトのウイスキー余市と、つぶし栗とブランデー羹を組み合わせたペアリング。余市はキンキンに冷やしたショットグラスで出てきまして。お口直し用か漬物がついてます。

それはそれとして、この急須? ちろり? デザインがいいですね…。銅製っぽいので、お酒を燗するのに良さそうですけど、構造的に熱いのは持てなくなるから無理ですね。前述のデミタスカップと同じように、用途を限定している器、というわけですね。

この器でウイスキーが出てくるのはいいですね、テンションが上がります。

4.ごぼう焼酎+榛摺(カカオとハシバミ)

ごぼう風味の焼酎と榛とチョコのお菓子です。

こぼう焼酎は、ちょっと美味しくなかったと味の記事の方で書きましたが、
器とお菓子の色合いと、こっくりした感じのテクスチャーはかなりマッチしてますよね。すごくイケてますよ(笑)。

黒いおちょこだけだと、見た目では物足りないですから、このセットの片口が存在感あっていいです。目で楽しむにはかなりいい感じですね。

5.真朱(赤ワイン+みりん)+棗バター

ワインのカクテルに棗バターという、このお店の看板商品を合わせたメニューが最終品目です。

また蓋です。蓋のついているワイングラスです。グラスの形状からして口径も小さいので、香りを楽しませることなく、さっとお口の中に飲み物が入るようになっています。みりん+ワインの香りはベタッとしてて心地よいものではないですしね。

……と考えると、蓋でわざわざ心地よくない香りを閉じ込めておくのはどうか、と思わないでもないんですけど(笑)まあ、目で楽しむメニューですから。

蓋つきのワイングラス、オシャレですわ。

棗バターの見た目もゴージャスな感じですから、ワインの赤とこの器と、合わせてクライマックスを楽しむ、みたいなところなのではないでしょうか。

感想:これは、ブランド広告であって、実際に頼むメニューではないのかもしれない

で、この記事の本題です。別の記事でぼろくそに書いてしまったのですが(笑)、

お菓子が小さすぎる時点で気づくべきでした。こちらのメニュー「酒果」は、実際に頼んで味わうメニューではない可能性が高いです。

これはわたしの推測ですが、店側としてお店のブランドを高めるための「デザイナブルなメニュー」であって、価格帯から察しても「実際にオーダーして欲しくない」メニューなのではないでしょうか。

「見た目がよい素敵なメニューがある店」とお客に認識してもらうためのメニューというか、お店のPRにするためのメニューであり、それ自体が広告となっているのではないかと思ったのです。

目で楽しむアート作品としてのメニュー

加えて、さらに思ったのが、広告塔以外の側面です。
味わおうとすると、2口で終わってしまう菓子とお酒のペアリングは成立しません(笑)。味わうのは無理です。と、すると、このメニューは何のために存在するのかと考えたんですね。
そこで、ハッと気づいたんですよ。

これは、アート作品、なのではないかと。

「酒果」は目で見て楽しむメニューであり、器と酒と菓子を組み合わせたアート作品であって、舌でなく目で味わうものなのではないでしょうか。お店側はそのように、このメニューを設計したのではないでしょうか。
それをわたしは舌で味わおうとしたから、マッチしなかったわけです。

店側としては「これはアート作品です。興味のある人は買ってね、そうじゃない人は注文しないでね」という意味合いで、この価格帯に設計しているのでは。

いや~、参りました(笑)。
そういうことでしたか。舌で味わおうしたらそれは納得いかないですよ。

思い返せば、お店の人のサービスが、なぜかギクシャクしていたんですよ。銀座の真ん中で、女性が一人でお菓子系のメニュー頼むのって、今や別に変でもなんでもないでしょ? と思ったんですけど、つまり、このメニュー頼む人がすごく少ないってことの表れなのだと、今さら気付きました。

正直、従業員さんのサービスも、今一つだなと思ったんですが、それってこの商品が「見せメニュー」で「魅せメニュー」で、頼む人ほとんどいないアート作品だからってことだったんですね。
ほんとに今さら、そのことが分かりました。

最終的に納得しました(笑)

というわけで、2つも記事書いてしまったんですけども、本当にここまでの考えにたどり着いて、納得しました。お店のブランドづくりや、お店をどう魅せるか考えたら、こういう戦略はぜんぜん有りですよ。

確かに味わおうとしたらマッチしないですけど、それは、分かってないお客の方が悪いと思います。

お店側が見せたいガワは、価格帯に一番表れます。価格にはお店のメッセージがちゃんと乗っているのです。わたしは当初、それを見抜けなかった。
「見せメニュー」だと気付けなかった。いやいやいや、参りました(笑)

今回はほんとうに良い学びになりました。ありがとうございました。

そしてごちそうさまでした。

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